LUCREZIA DREI Soprano RECITAL

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    2018年、新国立劇場の愛の妙薬にてルクレツィア・ドレイは日本での鮮烈なデビューを果たした。出演予定であったルーシー・クロウの代役ということもあり、聴衆の面持ちには不安の色も見え隠れしていたが、結果としてアディーナ役でデビューを飾れたのは彼女のキャリアにとっては幸運なことであったと言える。舞台映えする愛らしい容姿と演技力、彼女の持つ冴えた響きの高音域からは天性の才能、そして幼少期よりスカラ座で仕込まれてきた豊かな感性を窺わせる。もちろん、ピルグやジローラミとの共演による相乗効果もあったのだろうが、この公演を目の当たりにした多くの観客にとって、彼女が辿るであろうこれからのキャリアに興味が湧いた出演となったのではないだろうか。 彼女の持つ才覚は、すでにイタリアにおいては頭角を顕しつつあり、あのズービン・メータによる指揮で行われたアンドレア・ボチェッリとの共演はTVでも中継され話題を呼んでいる。もちろん、まだ彼女は大スターと呼ばれる歌手でこそないが、5年後は一体どうなっているだろうか?筆者自身も彼女のこれからの活躍に注目し、応援していきたいと思っている、そんな魅力を持ったソプラノ歌手だ。

 ルクレツィア・ドレイは、1989年にミラノで生まれ、幼少期よりピアノとフルートに親しみ、さらには英語、ドイツ語、フランス語、ロシア語、中国語などの外国語教育を受ける。ブルーノ・カゾーニとアルフォンソ・カイアーニ指導の下ミラノ・スカラ座児童合唱団に参加、リッカルド・ムーティ、ロリン・マゼール、ズービン・メータなどの監督と共にいくつかの特別な作品に参加する機会を得る。 オペラ歌唱をティツィアーナ・ドゥカーティ、そしてアンナマリア・ピッツォリに師事。G.ヴェルディ音楽院では声楽とフルート専攻を修了。彼女は音楽だけではなくミラノ・カトリック大学で外国語と外国文学を学び、音楽学と失読症および神経科学の分野では修士号を取得ほどの秀才としても知られる。舞台演技をミラノ・アルセナーレ劇場付属演劇学校にてミラノ在住日本人であり舞台演出家の井田邦明氏の指導を受ける。2013年サロンノ市ジュディッタ・パスタ国際オペラコンクール、マントヴァ市モンタルディ国際宗教曲コンクール、ミラノ市アッサミオペラコンクール。2014年マジェンタ市オペラコンクール、トレヴィーゾ歌劇場コンクールの各コンクールに優勝し、ヴェルチェッリ市ヴィオッティコンクールにてパヴァロッティ賞受賞。2014-2015年の2期に渡りAsLiCoコモ歌劇場コンクールに入賞し、モーツァルト『フィガロの結婚』スザンナ役とドニゼッティ『ドン・パスクアーレ』ノリーナ役を勝ち取る。
彼女のオペラ界でのキャリアスタートは非常に早く、若干13歳にしてスカラ座にアンドリュー・デイヴィス指揮『利口な女狐の物語』でソリストとしてデビュー。以降数多くのプロダクションに参加。マゼール指揮《トスカ》牧童役、プレートル指揮ドビュッシー《ペレアスとメリザンド》イニオール役、ランザーニ指揮《フェドーラ》ディミトリ役、ミラノ・スカラ座デュダメル指揮バーンスタイン《チチェスター詩篇》ソプラノソロ、ラヴェンナ音楽祭劇場ブリテン《ねじの回転》フローラ役、サンペテルブルク市ルービンシュタイン歌劇場レスピーギ《眠れる森の美女》王女役、青の精霊役、ローマ歌劇場にはロペス・コボス指揮ヴェルディ《仮面舞踏会》オスカル役でデビュー。2016年にはゼッダ指導のもとペーザロ・ロッシーニ音楽祭に『ランスへの旅』コリンナでデビュー。その他トリエステ・ヴェルディ劇場、、ボローニャ歌劇場、トゥ-ルーズ・キャピトル劇場など各地での出演が続いており、日本においては2018年ドニゼッティ《愛の妙薬》アディーナ役で新国立劇場への初登場が記憶に新しい。
ここにいくら賛辞を書き連ねても、明晰な頭脳と美しい容姿、そして澄み渡る美声を持つ才媛の魅力は表現し得ない。ぜひリサイタルにてあなたのその眼と耳で新たな星の輝きを感じて欲しい。

銀座 王子ホールへのアクセス
●地下鉄 銀座駅下車・・・・・・・・A12出口から徒歩1分
●地下鉄 東銀座駅下車・・・・・・・A2出口から徒歩2分