MANUEL AMATI Tenore RECITAL

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新しい時代の寵児へ、イタリアが産み落とした新世代のテノーレ・ロッシニアーノ

 イタリアで生まれた「ベルカント唱法」はイタリアで育ち、イタリアから世界へ発信された。いわば、世界中で求められたメイド・イン・イタリーの先駆けである。ベルカントオペラ時代の頂点に君臨した作曲家ロッシーニだけでは無く、モンテヴェルディ、パイジェッロ、ベッリーニ、ヴェルディ、プッチーニと大スターは常にイタリアから生まれてきた。歌手においてもカルーゾー、デル・モナコやパヴァロッティと枚挙にいとまがないのだが、現代はどうであろうか。歌劇場を覗くとロシアやアメリカ、南米、アジアなどからの優秀な歌手が軒並み主役を歌っているではないか。肌の色や背格好だけで差別されない、実力で判断されるグローバルな社会になったおかげで我々が住む日本からもスカラ座やメトロポリタンで歌う歌手が生まれた事はとても嬉しい事ではある。しかし、日本人の横綱が日本でも喜ばれるように、ベルカントオペラを担うイタリア人歌手には別の価値がある。なぜならばオペラが生まれた地元の住民であるイタリア人が応援するからだ。今まさに活躍せんとする我が街のテノールを街中が、市中が、いや国を上げて応援しているのだ。今回、日本でその声を始めて披露するアマーティは若干23歳の新人イタリア人テノールだ。若い!正についこの間生まれたばかりの出来立てホヤホヤのテノールなのだ。日本で言えばまだ社会に出たばかりの新卒という所だろう。まだまだ新卒であったとしても、彼は既にイタリア中で活躍する多忙なテノールの1人に数えられる。その誕生に気づいていない世界の歌劇場たちに先駆けて、

スターテノール誕生の真価を見定めよう。

 

 アマーティは1996年に南イタリアのマルティナフランカで生まれ、13歳でオペラ歌唱法の学習をソプラノ歌手フランチェスカ・ルオスポと学び始める、ヴィンチェンツォ・スカレーラ、ロベルト・スカンディウッツィの素でオペラレパートリーを研究。ボローニャ市立歌劇場オペラスタジオで学ぶ傍、2015年ブッセート・G・ヴェルディ歌劇場でのヴェルディ・フェスティバルにてリゴレットのボルサ役で劇場でオペラデビュー。
2016年にはピアチェンツァ、ラヴェンナ、モデナ、ザルツブルグなどの各劇場においてロッシーニ《イタリアのトルコ人》のアルバザール役にて出演。パルマにてロッシーニ《なりゆき泥棒》アルベルト伯爵役、また、彼はローマ市のファブリカ・ヤング・アーティスト・プログラムに参加し、ローマ歌劇場およびパレルモ・マッシモ歌劇場が制作した大型トラックのコンテナを舞台に繰り広げられる「オペラカミオン〈フィガロ!〉」プロジェクトのアルマヴィーヴァ伯爵役を演じた。
2016年11月から2018年6月まで、フィレンツェ5月音楽祭オペラアカデミーに所属し、フィオレンツァ・チェドリンス、ブルーノ・デ・シモーネ、ソニア・ガナッシなどの国際的に有名なアーティストと学ぶこととなり、モーツァルト《魔笛》タミーノ役、ファビオ・ルイージ指揮によるドニゼッティ《ラ・ファヴォリータ》ドン・ガスパール役での出演はDynamicレーベルによってCDとDVDが出版されている。また、フェデリコ・マリア・サルデリ指揮、ピエルルイージ・ピッツィ演出の下、グルック《アルチェステ》エヴァンドロ役他、モーツァルトのレクイエム、そしてファビオ・ルイージ指揮にてベートーヴェン《合唱幻想曲op.80》はMaggio LiveからはCDが出版され、その演奏が音楽雑誌Amadeus誌にて取り上げられた。また、アカデミーの一員として、北京、上海、広州、マカオ、香港の大使館と講堂で中国ツアーを敢行。2017年にはパレルモ・マッシモ歌劇場にてモーツァルト《カイロの鵞鳥》ビオンデッロ役、マルティナフランカのヴァッレディトリア音楽祭にてN.ピッチンニ《女たちの仕返し》ベッレッツァ伯爵役に出演。ボローニャ歌劇場ではバーリ大聖堂ペトルッツェリ歌劇場合唱団との共演でC.オルフのカトゥッリ・カルミナにソリストとして参加。2018年パレルモ・マッシモ歌劇場にてガブリエーレ・フェッロ指揮の下、モーツァルト唯一の劇音楽《エジプト王タモス》に出演。トリノ、レッチェ、ブリンディジでそれぞれロッシーニ《ラ・チェネレントラ》ドン・ラミーロ役としてデビュー。2018年の夏、ペーザロ・ロッシーニアカデミーに参加し、エルネスト・パラシオ、ファン・ディエゴ・フローレスに師事。ロッシーニ・オペラフェスティバルにて難役であるロッシーニ《ランスへの旅》騎士ベルフィオーレ役としてデビューを勝ち取る。ボローニャ、サヴォーナの各劇場にてロッシーニ《セビリアの理髪師》アルマヴィーヴァ伯爵役としてデビュー。2019年には、マスカット・ロイヤルオペラハウスにてヴィンチェンツォ・スカレーラ氏とのコンサートに出演とデビューから4年間の間にありとあらゆるオペラ、コンサートに引く手数多で全てを列挙するには別紙が必要だ。

ベルカントオペラ歌手の新時代到来を是非多くの方にご覧いただきたい。